人事異動は拒否できるのか?人事担当が教える人事異動の実情の全て
人事異動の内示が出た人や出そうな人は
「人事異動を拒否したい。実際、拒否できるの?」
「人事異動を拒否したらどうなるの?」
と気になりませんか。
筆者は10年ほど人事を経験し、社員の人事異動に関わってきました。
また筆者自身も人事異動の経験をしました。
その経験からお伝えすると人事異動を拒否はできません。人事異動を拒否すれば解雇されます。
後述しますが人事異動の拒否は裁判所も解雇することは問題がないという判断を下す傾向にあります。
ただし育児や介護等の理由で回避できる可能性もあります。
この記事を読めば、人事異動の拒否の実情が分かるようになるでしょう。
もし「人事異動を拒否したい」と考えている方はぜひ最後までご覧ください。
人事異動などの会社都合の事情に納得いかない人もいるのではないでしょうか。
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目次
人事異動は拒否できる?社員の拒否権について人事が解説
人事異動は基本的に拒否することができません。
企業には採用した正社員をどこに配属するのかを決定する権限があるためです。
人事異動の拒否を前提としてしまうと、企業側はその都度配属予定先に社員を採用することになります。
人事異動拒否に関してよくある質問として、以下の質問があります。
- 人事異動の拒否権がないのは違法ではないのか?
- 内示であれば拒否できるのか?
- うつ病を理由に人事異動は拒否できる?
- 人事異動を拒否できるケース
それぞれについて解説していきます。
人事異動の拒否権がないのは違法ではないのか?
人事異動に関しては日本最高峰の権力者である裁判官も「正社員の人事異動拒否は基本的に解雇してOK」という判決を出しています。
ケンウッド事件という転勤拒否に対する判例が人事部では有名です。
ケンウッド事件では、育児のために遠方の勤務地への配属を拒否した社員が解雇されました。
会社側に転勤に関する裁量を認められた判決であり、異動命令する権限は濫用に当たらない限り有効という判決でした。
権利の濫用とは、簡単に言えば権利を悪用する目的で使用してはならないということです。
つまり、業務上の必要性がないケースで本人に制裁を加える目的のために異動を命じるのは無効です。
ただし、ケンウッド事件においては退職者補充という明確な理由があることと異動対象を40歳以下の限定するなど条件をしっかり定めていました。
この判決は平成12年に確定した判決です。
現在は育児などに関しては育児介護休業法があるため、同じ判決にはならない可能性があります。
育児介護休業法においては育児や介護に従事している人には家族の状況に配慮して社員を勤務させる義務があります。
もしもこの裁判の最中に育児介護休業法の規定があれば異動命令は無効になっていた可能性が高いですね。
正当な理由があれば人事異動が拒否できないということは、正社員は終身雇用であり、解雇されない代わりに会社の命令を聞く必要性があるということです。
一説によると裁判官も転勤が多くあまり味方になってくれないという説もあります(弁護士談)。
クビは絶対にできない代わりに命令を聞く必要性ありというのが人事異動の基本ですね。
内示であれば拒否できるのか?
「内示の段階であれば拒否できるか?」というとすでに拒否権はありません。
人事異動が内示されている時点で他の部署との話し合いが済んでいる状態のためです。
内示された以上は人事異動を受け入れる必要性があります。
どうしても受け入れたくない方は内示された瞬間から辞めるかどうかを考える必要性があるということになります。
うつ病を理由に人事異動は拒否できる?
うつ病を理由に人事異動を拒否することは可能です。
企業には従業員が安全に勤務できるように配慮する安全配慮義務があるためです。
人事異動でうつ病を悪化させてしまう可能性があるケースや、かかりつけ医のところへ通勤できなくなるという事情がある場合には人事異動を拒否することができます。
ただし、異動を拒否した以上は一般的に人事考課に悪影響を及ぼします。
注意しましょう。
人事異動を拒否できるケース
「どんなケースなら人事異動を拒否できるの」と気になりませんか。
人事異動を拒否できるのは雇用形態が地域限定社員といった勤務地固定のケースや、病気・育児・介護などの特殊な事情を抱えている場合です。
具体的に人事異動を拒否できるのは以下のケースです。
- 正社員ではない
- 勤務地が限定された雇用契約の場合
- 正社員で介護や育児等で免除される可能性がある
それぞれについて解説します。
正社員ではない
正社員以外の契約社員・パートアルバイトの方は人事異動を拒否することができます。
正社員は解雇されない代わりに人事異動に従う義務があるのですが、契約社員やパートアルバイトは解雇されるリスクがあるためです。
雇用の保証もない従業員に対して転勤命令を発令することは法律的にも、雇用慣習的にも認められていません。
正社員以外に対しては原則、企業が転勤を命令出来ないということです。
勤務地が限定された雇用契約の場合
勤務地が限定された雇用契約の場合は、人事異動はできません。
勤務地を限定することを前提で会社と雇用契約を結んでいるためです。
会社側が雇用契約外のことを命じることはできません。
また、給料等も転勤がない代わりに転勤ありの正社員よりも安くなっているケースが大半です。
どうしても勤務地の要件を変えて移動させたいと企業が考えているなら話し合いで了解を得て契約を結びなおす必要性があります。
正社員で介護や育児等で免除される可能性がある
正社員であっても育児介護休業法において介護や育児等で転勤を拒否できる可能性があります。
具体的に育児介護休業法26条では以下の定めがあります。
(労働者の配置に関する配慮)
第 26 条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
参考:厚生労働省 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(平成 3 年法律第 76 号)
つまり、育児や介護をしている従業員に対しては転勤命令をする際は出来る限り配慮する義務があるということです。
実務的には育児や介護をしている社員がいる場合には、人事部と育児介護中の社員が相談をして育児介護中の本人がどうしても転勤できない場合は免除せざるを得ないということです。
もしも異動を強行すると裁判に移行して5年近い時間を費やすリスクが発生するため、会社側も異動を強行することはないでしょう。
以上が人事異動を拒否できるケースです。
ところで「人事異動を拒否したらどうなるの」と気になりませんか?
次は、人事異動を拒否してしまった場合の結末について解説します。
人事異動を拒否したらどうなる?人事が見た悲惨な結末
人事異動を拒否した社員の末路について解説します。
基本的に人事異動命令を出されたら社員は行くか辞めるかという決断を迫られる世界です。
人事異動を拒否したAさんは、それまでは将来管理職も確実視された名実ともにエース級の社員でした。
ところが、人事異動拒否をきっかけにメイン業務から外されて社内ニート状態になってしまいます。
親しい同期や同僚も、Aさんと話をしてしまうと自分も左遷されてしまうのではないかという恐怖から話しかけられなくなりました。
会社に来ても仕事を振ってもらうことができず仕事が1年以上もない状態になってしまいました。
最終的には再度の人事異動命令が発令されて、従うことになりました。
異動先はAさんがこれまで経験してきた部署とはまるで毛色の違う業務を扱う部署で、戦力になれませんでした。
最終的には会社を自己都合で退職することにります。
このようにエース級の社員であっても人事異動を拒否すると社内ニート状態になってしまうということです。
会社としてもこれ以上Aさんに良い仕事をしてもらうことが期待できなくなるため仕方ない措置となります。
ただし、上記の例は社員数が多く社員個別に特別対応できない企業のケースです。
社員数が少なかったり異動に関する前例が少ない場合は個別対応で許してもらうこともありえるでしょう。
ところで人によっては「社内ニートになってもいいから転勤拒否したい」と考えてしまう方もいるかも知れません。
次は、人事異動拒否を本気でしたい方におすすめの方法を伝えます。
どうしても人事異動できないなら転職するしかない
人事異動を拒否する場合、会社を退職することが前提となります。
人事異動拒否は介護や育児の問題を抱えている社員以外、裁判所も社内労働組合も、ユニオン(外部労組)も弁護士も助けてくれません。
法的にも、労働慣習的にも助け船を出す機関はありません。
辞めるしかないのが現状です。
実際問題として内示を受けた段階から転職活動をして異動前日に退職を切り出す社員が多いです。
異動辞令を受けて不服なら速攻で転職活動する必要性あります。
内示を受けたら間髪を入れず転職活動を開始してください。
正当な理由で拒否をしたい人は弁護士に相談がおすすめ
正当な理由で拒否をしたい人は弁護士に相談をおすすめします。
訴訟を起こせば会社側はいったん、判断を取りやめる可能性があるためです。
また、訴訟に至らなくても「裁判を起こされると世間から非難されるかも知れない」と異動を保留される可能性があります。
ただし、弁護士費用が30万円から60万円ほどかかります。
弁護士費用がない場合はユニオンに相談しましょう。
ユニオンは月々1,000円で加入可能ですし、団体交渉で異動拒否について争ってもらえます。
ユニオンの団体交渉における決定(妥結)と裁判所の判決はほぼ同等の効力を持っています。
どちらが劣るということもありません。
一度ユニオンに頼ってみましょう。
次は、人事異動で慌てないためのコツについて解説します。
人事異動で慌てないためのコツ
人事異動で慌てないためには、普段から周囲と積極的に交流しておきましょう。
「あいつ、飛ばされるらしいぜ」といったうわさはなぜか一般社員の方が知っているためです。
原因としては人事部に伝える立場の部課長が飲み会などで口を滑らせていることが原因でしょう。
このように人事異動の可能性がある場合は内示が出る前に準備をしておきましょう。
具体的には、以下のコツがあります。
- 人事異動の気配を探る
- 転職エージェントに年収相場や転職先候補の相談を定期的にする
それぞれについて解説します。
人事異動の気配を探る
人事異動の噂を普段から収集しておきましょう。
人事の動向を探るのはサラリーマンとして恥ずかしいことではなく、生き残るために重要なためです。
人事異動の噂が出たらしっかりと情報収集しておき、異動の気配を察知したら転職活動をスタートさせましょう。
転職エージェントに年収相場や転職先候補の相談を定期的にする
転職エージェントに年収相場や転職先候補の相談を定期的にしておくことが重要です。
普段から転職エージェントと連絡を取り合っておけば、異動を察知した瞬間から転職活動をできるためです。
おすすめの転職エージェントとして、JACリクルートメントとマイナビAGENTがあります。
JACリクルートメントは年収600万円以上の求人を保有しているハイクラス向けの転職エージェントです。
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また、マイナビAGENTはメーカーとITに強い転職エージェントです。
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まとめ
今回は人事異動の拒否について解説しました。
特に本文中でも解説しましたが、人事異動は原則拒否できません。
特別な理由である育児介護・病気などの事情がある社員以外は、行くか辞めるかの選択を迫られます。
人事異動を拒否する場合は会社を辞めることになるため、転職活動は1秒でも早く行うようにして下さい。
おすすめの転職エージェントはマイナビAGENTやJACリクルートメントです。
人事異動で慌てないために普段から周囲と積極的に交流したり、定期的に転職エージェントに相談することをおすすめします。
よくある質問と回答
人事異動は拒否しても良い?
人事異動は基本的に拒否することができません。
正社員の配属権限は企業側にあるためです。
よほど業務上で関係がない場合に悪意のみで人事異動を通達されない限りは拒否できないと考えておきましょう。
人事異動で拒否できるケースは?
以下のケースなら人事異動を拒否することができます。
- 正社員ではない
- 勤務地が限定された雇用契約の場合
- 正社員で介護や育児等で免除される可能性がある
具体的にはこちらをご覧ください。