離職票が出ないのは違法?届かない3つの理由と具体的な対処法を解説
退職したにもかかわらず
「離職票は出ないと言われた。なぜ?」
「離職票をもらえないのは違法じゃないの?」
「離職票が届かなかったときに何をすべきか知りたい」
と離職票が出ないことに対して困っていませんか?
筆者は約10年にわたり人事・労務を担当し離職票を100枚近く書いてきました。
その経験からお伝えすると離職票を出さない企業は違法行為をしていることになります。
ただし本人が勘違いをしていて、会社に請求をしていないなどのケースもあります。
この記事では離職票がでないことは嫌がらせなのか請求をできていないだけなのかはっきりわかります。
離職票が出ないときにすべき具体的な手順も掲載しています。
離職票が出ないと悩んでいる方はぜひ最後まで読んでいって下さい。
目次
離職票が出ないのは違法!企業は離職日から10日以内に発行義務あり
「離職票がでない」ことで悩むことはありません。
本人が離職票を請求して離職票を退職日から10日以内に発行しないことは、雇用保険法施行規則第7条に違反するためです。
参考:雇用保険法施行規則第7条|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
10日以内というのは目安ではなくはっきりと法律の条文に「10日以内に必ず請求があれば出しなさい」と記載されています。
ではなぜ離職票が出ないのでしょうか。
次は離職票がでない理由について解説します。
なぜ離職票が出ない?人事が発行しない理由を解説
「会社を辞めたのに離職票が遅い!」
と怒る前に実は本人がするべきことをしていないから離職票が出ていないことがあります。
筆者もよく「離職票が遅い」と人事労務をしていた時代に退職した社員から怒られていましたが、辞めた人の勘違いということもよくありました。
離職票が出ない理由としては、以下の3つが考えられます。
- 理由1:本人からの意思表示がない
- 理由2:会社による嫌がらせ
- 理由3:離職票には時間がかかるため、処理できていない
それぞれについて解説します。
理由1:本人からの意思表示がない
離職票は退職者が「離職票が欲しい!」と人事または経営者に伝えてはじめて発行義務が生じます。
雇用保険法施行規則第7条の2項において、「本人が請求しない場合は発行する義務を免れる」と記載されているためです。
参考:雇用保険法施行規則第7条 2項|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
つまり、離職票の発行は本人が欲しいといってはじめて発生する書類なので
会社に伝わっていないと発行されない可能性があるということです。
ただ、常識的に考えれば退職してから社員が会社に行くことは難しいため退職日や有給消化日までの間に人事部から退職者と面談を行い意思表示を確認するのが当たり前のことです。
確認されず常識のない会社に捕まってしまっている場合、必ず退職の日を迎えるまでに「離職票を発行してください」と伝えるようにしましょう。
ちなみに離職票で最もトラブルに発展しやすいのが離職理由です。
「会社都合退職なのに自己都合退職にされていた!」といった事態が起こらないように離職理由については会社と話し合いを必ずしてください。
本人の合意と押印・署名が絶対に離職票には必要となるため、納得いかない理由であれば証明捺印はやめましょう。
理由2:会社による嫌がらせ
請求があっても離職票を遅らせるような非常識な会社が嫌がらせのために離職票を送付しないという行為を行うことが多々あります。
離職票がないと雇用保険の失業給付を受けることができないため「生活に困らせてやろう」という陰湿な意図があります。
このような場合は請求したのに離職票が来ない点で違法行為になるため、後述する方法で会社に書類を請求しましょう。
理由3:離職票には時間がかかるため、処理できていない
実は一番多い理由が離職票の作成に時間がかかりすぎることです。
離職票の作成には4時間はかかるためです。
人事部が独立しておらず他の業務と兼任しているような状態ではなかなか10日以内には出せません。
離職票を作成し、本人の印鑑・署名をもらい、さらに会社印を押してハローワークに持っていって、ハローワークの担当者が納得しないと離職票を受け付けてもらえません。
退職日にすぐにハローワークに持っていって郵送の時間を考慮すると、退職後の住所によっては10日以内につけば早いなという印象すらあります。
ただ、10日以内に離職票を出すことはまともな会社であれば当たり前のことなので、10日を厳守しない企業は厳しく批判されるべきです。
なぜ離職票が出ない?人事が発行しない理由まとめ
- 理由1:本人からの意思表示がない
- 理由2:会社による嫌がらせ
- 理由3:離職票には時間がかかるため、処理できていない
ところで「離職票がでない場合はどうすればいいの?」と悩んでいませんか。
次は、離職票が出ない場合の対処法について解説します。
離職票が出ない場合はまず書留で請求しよう
離職票が出ない場合は会社に書面で請求を送りましょう。
内容証明がいいというケースもありますが、筆者はおすすめしません。
会社と揉めて退職した場合には内容証明は相手を挑発しかねないためです。
内容証明は弁護士が裁判所によく送る方法だからです。
そのため書留で郵送するようにしましょう。
書留の書類サンプルは以下の通りです。
書留で書面を送っても返送や返事がない場合には、ハローワークに行き「確認の請求」をあげるようにしましょう。
参考:会社が離職票を交付してくれない|埼玉県公式ホームページ
会社に請求したという事実があればハローワークが離職者として独自で認定し、失業給付を支給してくれる可能性があります。
「それなら最初からハローワークに頼めばいいじゃないか」
と思うかも知れませんが、まずは離職票を請求をしたが会社が無視をしたという事実がないとハローワークも動けません。
その後の手続きをスムーズにする意味でも、先に書面を送付して相談するようにしましょう。
送付した書面は書留の記録と一緒にコピーを持っておくようにしてくださいね。
離職票が出ない場合にとるべき行動まとめ
- 会社に書留で書面を送って請求する
- ハローワークに「確認の請求」を行う
ところで「いま、店が休業していて離職しているのか休職しているのかはっきりしないのだけれど」
と悩んでいる人はいませんか。
次は、休職か解雇なのかをはっきりさせる方法について解説します。
休職状態か解雇状態か判断がつかないケースが多発
新型感染症の影響で自分自身が休業しているのか解雇されているのか分からずに悩んでいる方が多くいます。
政府の行った緊急事態宣言により多くの飲食店・ホテルが休業を余儀なくされているためです。
自動車産業なども一時的に大幅に減産するなどの打撃を受けています。
休業者の数はなんと600万人!そのまま失業状態へスライドする可能性があります。
参考:新型コロナ:休業者、最多の600万人 統計にみる4月の経済異変|日本経済新聞
筆者は労働組合活動などを通じて様々な声を聞いていますがお店やホテルが休んでしまっていて、いつ再開するのか分からず不本意にも自宅待機命令を受けたような状態になっている方が非常に多いです。
しかも休業補償などが支払われていないケースが圧倒的に多いです!
会社が経営者の都合で労働者を休ませる場合には絶対に60%以上の休業補償を支払う義務があります。
自分自身が解雇されているのか、それとも休業状態なのか判断がつかない場合には、3つの選択肢があります。
休業状態か解雇状態か判断がつかない場合にとれる選択肢3つ
休業状態か解雇状態なのか判断がつかない場合には、以下の3つの選択肢があります。
- 選択肢1:ユニオンへ相談
- 選択肢2:弁護士へ相談
- 選択肢3:労働基準監督署へ相談
おすすめ順に紹介していきます。
選択肢1:ユニオンへ相談(もっともおすすめ)
自社に労働組合がある場合には労働組合が戦ってくれますが、自社に労働組合がない場合にはユニオン(外部労働組合)に加入する方法をおすすめします。
ユニオン(外部労働組合)は加入費用が安く、おおむね1ヶ月1,000円で加入できます。
ユニオンを通じて団体交渉を経営者に対して行ってもらうことで、経営者側から休業補償など生活のために経営者が労働者に対して支払うべきお金を支払うように促してもらえます。
自分1人で抱え込むのではなく、まずは近くのユニオンの労働相談に気軽に相談してみましょう。
また、団体交渉を行っても経営者がしっかりと対応しないなどのケースに遭遇しても、ユニオンにはお抱えの弁護士や懇意にしている労働者側弁護士がいます。
筆者の経験談ですがユニオンを経由した場合には相談料が無料になるだけではなく特別に着手金を安くしてくれるケースが大半です。
また社会正義に燃えている弁護士の方が味方についてくれるため、不安感なく交渉を行うことができます。
選択肢2:弁護士へ相談
休業補償について争う場合には弁護士に相談する方法も有効です。
ビジネスインサイダージャパンでもとりあげられていますが、休業補償が貰えない場合に泣き寝入りする必要性は一切ありません。
参考:コロナで休業補償「足りない、もらえない」と相談殺到。弁護士「泣き寝入りしないで」 | Business Insider Japan
民法上は本来100%以上の休業補償の支払いをしなければならないにも関わらず経営者が休業補償の支払いを行わないことは違法行為であり、犯罪です。
法テラスに相談し、弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士に相談すると、ユニオンに加入して団体交渉をするように勧められる可能性もあります。
ユニオンにも顧問弁護士や懇意にしている労働者側弁護士がいるため、労働問題の早期解決という点ではユニオンの方が優れていることもあります。
選択肢3:労働基準監督署へ相談
もっともおすすめしないのは労働基準監督署への相談です。
どれだけ労働者が困っていても対応してもらえないケースが多いためです。
基本的に解雇問題や休業問題は労働基準監督署の争う範囲ではありません。
労働基準監督署に相談しても何もしてくれないですが、愚痴を言う程度に利用するのであればお近くの労働基準監督署へ相談しても良いかも知れません。
ただし期待は薄いでしょう。
労基への相談は時間とお金の無駄になる可能性が高いためユニオンへのご相談が良いです。
1,000円でユニオンに加入して、ユニオンの顧問弁護士や組合の委員長に1日も早く相談して解決を模索するようにしましょう。
休業状態か解雇状態か判断がつかない場合にとれる選択肢3つ
- 選択肢1:ユニオンへ相談(もっともおすすめ)
- 選択肢2:弁護士へ相談
- 選択肢3:労働基準監督署へ相談
まとめ
離職票は雇用保険法施行規則第7条で本人が請求すれば必ず10日以内に発行する義務があります。
離職票が出ない理由としては、以下の理由が考えられます。
- 理由1:本人からの意思表示がない
- 理由2:会社による嫌がらせ
- 理由3:離職票には時間がかかるため、処理できていない
特に本人が請求していないケースが多々あるので気をつけましょう。
また、口頭で請求しても離職票が出ない場合には、書留で請求しましょう。
休職状態か解雇状態か判断がつかないケースが多発しています。
その場合、とれる手段は3つです。
- 選択肢1:ユニオンへ相談
- 選択肢2:弁護士へ相談
- 選択肢3:労働基準監督署へ相談
労働基準監督署は基本的に相談をしても何もしてくれません。
まずはユニオンへの相談がおすすめです。